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こゝで述べる補聽器とはマイクロホン,真空管回路,受話器よりなる小型携帯用音響増幅器のことである。補聽器の機能とは難聽者の聽力を正常聽力に近づかせる程度と解釈されるが,その測定は非常にむつかしい。何故なれば正常耳は非常に違つた音響即ち語音,楽音,機械音,種々なる自然の音響などを聽取出来るが,これらの音響に対して良好な機能を補聽器に持たせるには夫々異なつた時には相反する音響特性が補聽器に必要となるからである。従つて解釈を簡単にするために対象を語音のみに限ることとして補聽器の機能とは難聽者の語音聽力を正常に近づける程度であると定義することにする。故に補聽器の機能は語音検査によつて測定される。30語より100語までの意味のない語音或は意味のある単語が集められた語音表或は日常会話によく現われる短い文章を集めた語音表を一定の強さで被検者に聽取させ,それに就て書取或は復唱を行わせて夫々の表について正しい応答の語数の全数に対するパーセント比を測定する。これらの成績は明瞭度(意味のない語音表の成績)或は了解度(意味のある語音表の成績)と呼ばれる。語音検査には成績に変動を起す種々なる原因が内蔵されているのでこれらの原因を除去し検査成績が補聽器と聽力損失との関係にのみ限られるようにするためには語音検査の実施条件は厳重になり検査は益々人工的となり日常生活の条件と違つたものになる。例えば,
1)語音検査は雑音と反響のない室内で行わねばならない。
2)被検者の知識内容の差異及び方言の影響を除くために意味のない語音を使用する必要がある。
3)記憶による影響を除くため語音表は検査毎に取代えねばならないが,その了解の難しさは各表を通じて一定でなければならない。
4)被検者が検査に馴れて一定の成績が得られるまで検査を行わねばならない。
5)被検者を検査に協力的にしておかねばならない。
以上の条件が満足されて語音検査行われたと仮定しよう。
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