特集 耳鼻咽喉科診療の進歩
身体障害者福祉法と聽力障害
颯田 琴次
1
1東京芸術大学
pp.565-568
発行日 1954年12月15日
Published Date 1954/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492201228
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Ⅰ.身体障害者福祉法 昭和25年4月1日,身体障害者福祉法という法律が施行せられ,我国に於ても身体障害者に初めて光がさしてきた。
今までこれらの人々の歴史はまさしく茨の道であつた。不具であるということだけで蔑すまれ,一人前の人間としてはあつかわれなかつた。遠くローマ法によつても,法的には人権を認められず権利もなければ,義務もない生活を送つていたのである。いやそれよりも,神の怒りによつて,この樣な不具となつたものだと考えられ,民衆に対するみせしめとされ,虐待すらされていた。中世期を経て,自由と人権を謳歌するルネツサンスにいたり,初めてこれらの人々も亦普通人と同樣のものであると考えられ,人間としての権利を認められた。不具はそのひと自身又はその組先の罪悪に対する神の怒りにより罰として課せられたものでなく,原因は外にあると考えられ,一人前の生活能力のないあわれむべき人間として,宗教家,社会事業家達により色々の保護策がとられることとなつた。我国に於ても同樣の経過をとり,身体障害者は罪人と考えられ,次にはあわれむべき人人として慈善事業の対象とされてきた。明治7年制定の恤救規定によつても,不具者に対しては1日米3合を与えるということになつていたのである。
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