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鼻とクシヤミ病と感冒
pp.289,306
発行日 1953年6月20日
Published Date 1953/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200911
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頑健を以つて唯一の自慢としている筆者が,春先き感冒にかかつて發熱40度に達し,4,5日寢床へ釘付けにされた。感冒なるものは近頃の學説によると,傳染病だそうだから,之れに罹ることは決して不名譽ではない。たとえ結核にかかつても,癩にかかつても,是は社會の缺陷から來る結果であつて,必ずしも自分の責任のみではない。況んや感冒菌の如きは恐らく濾過性であり,空中を浮動する事最も輕妙であるから,こんな手合の空中襲撃を豫防することは,到底出來る相談でない。
さて感冒は治つたが,鼻の奥に後胎症が殘つた。その一つは嗅覺の不感症である。朝みそ汁を吸つても,あの鼻を刺戟する快感を催さない。ハナツンボは目かちより惨ましいものだと痛感した。不感症と云うものは,鼻と限らず,さぞつらいものであろうと,大いに同情を催しもした。
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