特集 難聽研究の進歩
鼓膜癒着症の病理と治療
高原 滋夫
1
1岡大
pp.636-641
発行日 1952年12月20日
Published Date 1952/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200812
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鼓膜癒着症とは鼓膜が鼓室内壁と癒着しているもので,その癒着の程度には軽重樣々の姿が見られ,重症のものでは鼓膜の殆ど全面が鼓室内壁と癒着して居り,軽症のものでは鼓膜と鼓室内壁が或一部分に於てのみ癒着している。その耳鏡所見としては鼓膜は全面に又は部分的に強く内陥し,多くは腱樣の乳白色を呈し,時には鼓膜の一部に石灰の沈着を見,槌骨柄は強く突隆し,癒着部は通気によつて可動性を示さず,高度の難聽,時に耳鳴を訴えているのが通例である。斯かる患者は日常外来に可成り多く見られるもので,我教室2年6月間に87例を算しているが,専門開業医院又は一般官公立病院に於ては更に多数の症例が見られるものと思う。
此の鼓膜癒着症は化膿性中耳炎の後遺症として,又耳管中耳カタルの慢性症の場合に発来し,前者によるものの方が頻度が高く然も癒着が強度で,従つてその難聽も高度である。殊に化膿性中耳炎の中では上鼓室化膿症(Cholesteatomを含む)の症状軽快者に見られる事が多い。
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