特集 難聽研究の進歩
伝音の理論
恩地 豊
1,2
1医歯大耳鼻科
2横浜掖済会病院
pp.578-587
発行日 1952年12月20日
Published Date 1952/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200805
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聽覚現象を説明する理論は物理的振動過程より聽覚成立に到るまでの間に振動の種々なる変形が行はれるが,その夫々の段階に於て或は物理学的或は生理学的,或は解剖学的或は心理学的説明を包含してゐなければならない。然し聽覚現象の心理的分野に属するものは従来まで神経中枢の機能に就て殆んど何も判明してゐないからこれに就ての科学的説明は現在では不可能である。私の述べんとする伝音の理論は物理生理学的実験によって得られた事実より外耳中耳内耳を通じて惹起される音波エネルギー転換の模樣を説明せんとするものである。従来の聽覚説は殆んど内耳に限られてゐるから耳科臨床で遭遇する現象の理解に役立たない欠点がある。私はこの点を考慮しながら伝音の理論を展開したいと思ふ。
人間の聽器は外耳中耳内耳の3部に分けられてゐるが.これらを通じて常に成立する理論は音波の反射及び透過の法則である。
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