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不幸な轉歸を取れる壞疽性口峡炎の1例
川嶋 達雄
1
1慶應義塾大学耳鼻咽喉科学教室
pp.22-24
発行日 1951年1月20日
Published Date 1951/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200446
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緒論
我々耳鼻咽喉科領域の診療上極めて多数遭遇する扁桃腺炎は,適当な治療に依つて予後良好なる急性扁桃腺炎が大部分を占めるものであるが,其の他猩紅熱アンギーナ,ワンサン氏アンギーナ,ルードウイヒ氏アンギーナ,壞疽性アンギーナ,顆粒細胞減少性アンギーナ等があり,又慢性アンギーナより來る急性扁桃腺炎,及び鑑別診断上必要な咽頭ヂフテリー等がある.之等の中最も予後不良とされている壞疽性アンギーナは尚我々の研究すべき余地がある.この壞疸性アンギーナは1種の症状名であつて,診断名ではないと考えられ,從つてその本態の解明は時に不可能の事がある.
私は最近高度の歯槽膿漏のため連続的に抜歯を敢行し,爲めに突然の惡寒戰慄と共に上顎部に膿瘍を招來した後治療を受けたが,再び高熱を発し,某医より急性扁桃腺炎と診断された後,ペニシリン注射を受けたが,完全に治癒せず,全身状態極めて惡化した後当病院に入院した.入院時の診断として左壞疽性口蓋扁桃腺炎,右急性扁桃腺炎であつたが血液檢査の結果顆粒細胞減少性アンギーナ及び左下顎歯齦部潰瘍を伴つた症例である.治療としては輸血2回,大量のペニシリン注射,全身衰弱に対し大量のリンゲル氏液及び栄養剤の注射等行つたが,藥石効なく入院後5日にして遂に鬼籍に上つた次第である.
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