附録
不幸な轉歸に終った高年初産婦の一例—聖路加病院座談會
発行日 1952年9月15日
Published Date 1952/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661907142
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○松岡 一般に高年の初産婦というのは,大體30歳以上のもので初めて初産を經過する妊婦をいうのですけれども,何故わざわざ高年の初産婦ということを斷わるかといいますと,組織學的にいつて,初産に最も適當な年令というのは20歳前後でありまして,軟産道の組織がやわらかく潤軟しておりまして,その伸展性も從つて非常に大であります。ところがそれが一般に25歳以上になりますと,その組織がだんだん硬靱となつてきまして,彈力性がなくなつてきます。それが特に30歳以上になりますとますます甚だしく,從つて30歳以上になつて初めて分娩が行われるときには,一般にいわゆる難産になりやすい。それで我々産科の方では30歳以上のものを高年初産婦として特に注意を向けるわけであります。
それではその高年の初産婦にはどういう分娩障碍が起り易いかといいますと,第1に只今も申しましたように,その軟産道の伸展性がありませんから頸管及び子宮孔の開大に非常に長時間を要する。即ち分娩が長時間かかるということになります。で,それはたとえばBaischという人の統計によりますと,初發陣痛から分娩終了迄,即ち分娩時間を計つてみますと,20歳前後においては平均16時間。それから26歳〜30歳が21時間。31歳〜35歳になりますと26時間,36歳〜45歳以上になりますと28時間牛という統計が出ております。第2には高年の初産婦には早期破水が起りやすい。
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