臨床講義
口蓋破裂
三邊 武右衞門
1
,
山崎 禎子
1
1東邦医大耳鼻咽喉科教室
pp.297-299
発行日 1950年7月20日
Published Date 1950/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200372
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口蓋破裂(Cleft-palafe, Gaumenspalte)は口蓋及上顎に亘る発育異常で,軟口蓋破裂と硬口蓋破裂とがあつて,硬口蓋破裂は軟口蓋破裂を伴つている.破裂は片側或は両側に生じ軟口蓋破裂は正中線上にある.破裂が更に高度で歯槽突起に及び兎唇を伴う時は狼咽Wolfsrachenと云う.
先天的に來り遺傳が有力な因子で,本病は胎生期の発育障碍によるものである.この成立を理解する爲めに口蓋の発生に就いて述べる.口腔の形成は胎生の早期に始り,第1次口腔の口裂は前頭突起及上顎突起下顎突起(共に有対にして第一鰓弓に由來する)の5隆起から取囲まれている.第1次口腔の天蓋の形成が進み,胎生7週で上顎突起の内側で両側より口蓋板を発生し,初めは矢状位をとり両側の間に舌を抱擁する.次いで第8週で舌は口腔底と共に下降し次第に水平位をとり,両口蓋板は接近癒合し,胎生口蓋裂を結締織性に融合閉鎖して口蓋を形成する(第1図,第2図).これ等の中何れかの発育異常により,或は異物の介在等により癒合が行われない時,片側或は両側に破裂を生ずるのである.
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