--------------------
所謂Grunert氏大手術による耳性横洞並に頸靜脈球血栓の一治驗例に就て
宮本 久雄
1
1岡山医科大学耳鼻咽喉科教室
pp.110-112
発行日 1950年3月20日
Published Date 1950/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200315
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
緒言
血栓が頸靜脈球に生じた所謂球血栓の場合,其血栓の開放は解剖学的関係上甚だ困難且複雜な手技を要する.之に対し1940年GrunertはS字状洞と頸靜脈窩の間の骨橋を除き,洞,球,及び内頸靜脈を外方に向つて開放した一連の溝と爲し,以つて全靜脈管に対し徹底的な処置を行わんとする所謂Grunert氏大手術を考案した.然し本法は手術的侵襲が大であり,又技術的にも甚だ困難であり,而も臨床上大多数は内頸靜脈結紮或はVoss,Pfiffl等の比較的簡單な手術法に依つて治療の目的を達し得るものであるから本法の應用範囲は余り大ではないが,尚上述の如き洞及び球血栓,又は内頸靜脈に対する処置が殆ど効を示さず全く絶望的とされたものに対し,所謂Grunert氏大手術を敢行する事によつて治癒せしめ得る事の少くない点は亦我々の注目を要する処である.
筆者も亦最近耳性化膿性脳膜炎に横洞より頸靜脈球に亘る廣汎な脳靜脈洞血栓を合併した症例に於て,前者に対しては病巣開放(中耳根治手術),脳脊髓液持続的排出法,及びペニシリン,ズルフオン剤大量使用に依り奏効せしめる事が出來たが,後者に対しては種々血栓の処置に努めたるも,其経過中に耳性血栓性敗血症の重篤症状を誘発し,遂に最後的手段として之に所謂Grunert氏大手術を敢行して,奇蹟的にも九死を免がれしめる事が出來た1例を経驗したので其大要を報告する.
Copyright © 1950, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.