臨牀例
胃潰瘍穿孔の姑息的手術による一治驗例
坂本 馬城
1
,
深谷 愼三
1
1東京大學附屬小石川分院外科
pp.28-30
発行日 1948年1月20日
Published Date 1948/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407200280
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胃,十二指腸潰瘍穿孔の場合には出來るだけ早く手術を行ふ必要があるが,此の際原病たる潰瘍治癒をも達成し得る理想的手術--胃切除術を行うか,或は救急手術としての姑息的な穿孔部閉鎖に止めて置くべきかの判定は,個々の症例に就て常に必ずしも容易でない。
Graham氏は穿孔時の救急手術は最も簡單で侵襲少く,しかも效果的な方法で遂行されねばならないし,又比較的經驗の少い人でも行へるものでなければならぬと説いて居る。氏は1929年以來行つて來た姑息的手術法で,125例中死亡8例,死亡率6.4%と云ふ好成績をあげて居る。氏の方法は第1圖の如く,穿孔部の上・中・下3箇所に長軸に平行にカツトグートを通して置き,大網又は脂肪を其の上に持ち來たし,之をカツトグートで結紮し,穿孔部から移動しない程度に締める。其の際穿孔部の邊縁を互に近接させる必要はないと云ふ。
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