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中耳炎に對するペニシリンの動脈注射療法
中村 四郞
1
,
小坂 四郞
1
,
永沼 幸道
1
1日本大學醫學部耳鼻咽喉科教室
pp.233-239
発行日 1948年12月1日
Published Date 1948/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200103
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緒言
さきに著者等は第48回日本耳鼻咽喉科總會(1947)において,主としてSulfa-drugと高調糖液との動注による乳樣突起炎型中耳炎の治癒率は66.6%にして無効例は33.3%であつたことを發表したが,今回はムコーズス菌性乳樣突起炎を主な對象として,Sulfa-drugの代りにPenicillinを動注した場合の成績を報告し,併せてPenicillinを動注した場合と筋注した場合との効果の差異に就ても述べてみたいと思う.
從來,中耳炎の起炎菌としては,溶連菌(β-type),ムコーズス菌,緑色連菌(α-type),葡萄状球菌及びその他のいろいろな菌があげられているが,これらの中で特に我々の臨床的興味をひくものはムコーズス菌中耳炎であろう.ムコーズス菌中耳炎においてはその起炎菌であるムコーズス菌がOsteophile Bakterienと呼ばれるだけあつて側頭骨含氣蜂窠の粘膜のみならず深部の骨組織をも好んでおかすという我々にとつては誠に迷惑至極な特徴をもつているために,ム菌(ムコーズス菌を以下ム菌と略記する)による乳樣突起炎や耳性頭蓋内合併症を續發し易く.從つてその豫後がおもわしくないという點において耳科領域においては一種獨特の存在として特に注目されている.
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