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ペニシリン動脈注射療法に對する批判
本多 憲兒
1
,
浦上 輝彥
1
,
佐藤 弘隆
1
,
飯島 俊雄
1
,
熊谷 直
1
,
伊藤 茂雄
1
,
木村 止
1
,
堀田 廣行
1
1東北大學醫學部武藤外科教室
pp.411-415
発行日 1948年10月20日
Published Date 1948/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407200377
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吾々は昨春の日本外科學會席上ペニシリン(以下P)全身療法の基礎的研究としてのP吸收,排泄に關する知見1)2)を發表し,Pの動脈注射に就ては排泄速なるを以てPの作用機轉より合理的ならざるも驅血帶により注射側血中濃度を長期保持せしめ得ることを附言した。直ちに千葉醫大中山外科教室よりPの動脈注射法の優秀なること,葡萄糖に混ずる時はPは關節腔内にも排泄される等の驚異的知見の教示を受けた。其後中山教授は其著書3)又は論文4)に本療法に就て種々の新知見を發表されたことは周知の如くである。然れども吾々の研究成績は依然として反對であるのみならず中山教室の實驗成績には醫學常識上直ちに承認出來ない所があつたので追試をも行ひ,其結果を今春の日本外科學會席上で公表した。然し學會に於ては時間に制限され吾々の所論を充分盡し得なかつたので,更に猶本邦外科の權威の意圖を誤解してから筋肉注射時にも葡萄糖に溶解しての使用も行はれて居る如くであるので茲に所論を敷衍説明する次第である。
昨春吾々は何故にP動脈注射をPの作用機轉から不合理であるとの結論をしたか。如何に優秀な藥劑も適應と用法を誤れば奏效しない。P療法に於ても同様である。吾々がP療法に於て最も重要視するのは適量を一定の間隔で注射して血中P有效濃度を必要期間持續せしめることである。之は勿論吾々の新知見ではなく周知の如く既に英米に於て確認された決定的事項である。
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