論説
耳下腺開口部の形態に就て
中島 恒雄
1
,
千葉 英明
1
1福岡縣飯塚市飯塚病院耳鼻咽喉科
pp.31-32
発行日 1948年4月1日
Published Date 1948/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200048
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流行性耳下腺炎の所謂排泄管症状(Speichelgangszeichen)なるものが成書には記載されてゐる。即ちステノン氏管開口部の紅單竝に腫脹を認めることがあるとしてある。大日本耳鼻咽喉科會第四十四回總會に於て,中村豐氏は12例の流行性耳下腺炎患者に就き,耳下腺腫脹側のステノン氏管開口部に一致して小乳房状の隆起を認め,その中央に特有な鮮紅色乃至暗紅色の一點が存在し,この色調は耳下腺の腫脹状態と略ゝ一致する。かくの如き特異な口腔内所見は他の疾患及び正常人には認められないと發表してゐる。久保正雄氏は之に對し中村氏の發表は新症状といふべきではなく,既に自分等も教はつたところであり且現在學生にも教へて居り,本病時消炎劑を該側ステノン氏管排泄口に塗布してゐると言つてゐる。
私は本年4-6月にかなりの數の流行性耳下腺炎患者を診療したが,かかる症状が當然認められるものと考へ,該部を詳しく觀察し,更に他の疾患で受診する患者のステノン氏管排泄口部をも詳細に觀てゆくうちに疑問を抱いたので,7月以降9月末迄,流行性耳下腺炎患者12例,他疾患で來院したもの186例に就て比較觀察し,次表に示すやうな結果を得た。(第1表,第2表)
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