雜録
最近のアメリカ耳鼻咽喉科學界を聽く座談會
ダビットソン
,
大藤
,
小野 讓
,
高橋 松太
,
西端 驥一
,
北川 和男
pp.33-36
発行日 1948年4月1日
Published Date 1948/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200049
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以前からの此の計畫が小野ドクトルの非常な盡力によつてやつと實現した。當日夕刻氏の邸宅を訪づれる。靜かな住宅街であるが隣りまで空襲で燒けてゐる。高橋ドクトルと夕食を御馳走になつてゐると北川君が來た。接待は小野氏の義姉の方がして下さつた。聞けばやはりアメリカに居られた由。夫人は聖ルカ病院までダビットソン大尉を迎へに行かれたとの事。思ひがけぬ處に小野氏一家の苦心があるのを知つて胸を打たれた。
大藤教授が來られた後間もなく大尉がジーブで着かれたらしく小野氏は應接間に行く。私は初め我々が應接間で待つてゐる處へ大尉を迎へる場面を豫想してゐたので心構えが崩れてしまつた。デザートもそこそこにして二階に上ると眉の濃い細面の大尉が氣難しさうな面持で立つてゐたので益々勝手が違つて落付きをなくす。陽氣な明るいアメリカ人を豫想してゐたので堅くなつて挨拶をしそこなつてしまつた。「I am glad to see you」と挨拶の言葉位は勿論知つてはゐたが餘りに平凡なやうな氣がして云ひそびれて默つて握手してしまつた。嘸無愛想な男だと感じた事であらうと私は一層堅くなつた。
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