論説
發生學的並びに手術的見地よりせる篩骨蜂窠の解剖學的研究— 概要
窪田 一胤
1
1慶應義塾大學醫學部耳鼻咽喉科教室
pp.76-88
発行日 1947年6月1日
Published Date 1947/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492200021
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緒言
從來我々に副鼻腔手術の指針を與へて居たものは系統解剖學的知識であつた。處が是は必ずしも手術者の便宜を顧慮しているものでないが爲に,手術法といふ一定の制約のもとにある手術者は一般解剖學の豫想しなかつた如き見地から更めて副鼻腔の構造を見直して,各自が獨自の構圖を獲得した上で手術に當らなければならなかつた。例へば鼻腔側壁から觀察した篩骨洞の構造を殆ど唯一の基礎として,上顎洞より見た篩骨洞の構圖を組立てるといふ,極めて混迷に陷り易い手續を經なければならなかつた。此の飜譯的な念頭の構圖と事實の間の相違は揣摩臆測の反復と豐富な經驗によつて徐々に修正されては行くが,結局斯る筋途に於ては長時日の習熟を經て漸く正しい理解が得られる。特に複雜な篩骨洞を中心とする此の手術ではそれが痛感される。
茲に本手術に於ては,實地上の要求に即した解剖學の必要が生ずる。
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