〔Ⅳ〕私の研究
軍用鳩水晶體の發生學的研究
油井 直行
1
1東京帝大眼科教室
pp.43-45
発行日 1947年4月20日
Published Date 1947/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410200177
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水晶體の發生に關しては,C.Rabl(1899)の各種脊椎動物に亘る廣汎な業跡があるが,氏の用ひた鹽化白金の固定液は多少膨化作用があり,且つ例へば鳥類では家鴨と鷄に就て述べるに止まり例數も少なく,充分な結論は得られて居らず,又水晶嚢の發生に關しては氏自身他日を期して居り,今日尚確な説明は與へられてない。發生の觀察には材料を豐富に容易に入手し得るのが便利であるので卵生である鳥類,しかも素晴しい歸巣力を主として視力に依て果す傳書鳩に着眼した。發生初期の材料は脆弱で,その取扱ひ特に固定には最も注意を要し,殊に水晶體は彎曲した纖維の集合である故,固定液には些の膨脹乃至收縮作用があつてはならぬ。且つ常識として組織に加へられる手技及び時間が最小限である事が微細な構造を保持する要提であらう。かゝる意味で自分は先づ標本製作技術を充分檢討し,普通發生學で使用されるBouin, Zenker, Ciaccio, Susa, Carnoy 等8種の固定液につき,8日の胎仔を用ひて比較し,液の各成分の濃度等を加減した結果,Carnoy液の氷醋酸量を規定の1/4以下とせるもの,即ち純Al-cohol 12, Chloroform 6,Eisessig 0.5-0.3ccとし。5'−40'固定するのが理想に最も近い事を知つた此場合には水洗の必要もなく數時間純Alcoholで洗ひ乍ら脱水すればいゝ。
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