〔Ⅳ〕私の研究
鳥類眼扇状體の發生學的研究補遺
阿部 八重子
1
1東京帝大眼科教室
pp.45-47
発行日 1947年4月20日
Published Date 1947/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410200178
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鳥類の乳頭は人間と異り,圓形ならず細長なり,其上より扇子を半ば開きたる形にて,黑褐色をなせる者,硝子體腔に突出し,之を眼扇状體(Pecten,Fächer)と名附ける,傳書鳩にては下縁即ち乳頭に接せる部の長さ5.8粍,上縁即ち硝子體に遊離せる方の長さ3.9粍,高さ中央にて3.3粍,厚さ下縁にて1.5粍,上縁にて0.8粍なり,皺襞は18を數ふ。上縁及び下縁を切斷し擴ぐる時は扇状體の長さは約2.1粍なり。之を細隙燈顯微鏡にて見るに,扇状體の基底を走る太き血管より數10條の小血管出で,皺襞の方向に走り互に隣接の者と吻合し,血管以外には色素が網状をなす。
扇状體の解剖,機能,發生については,Petit(1738)以來多數の學者の研究あり,日本に於ては梶川,草川,高橋,山本,渡邊,宇山諸氏の報告あり,扇状體が外胚葉性なりや,中胚葉性なりやにつきては二説あり,Lieberkühn,Denissenko氏等は外胚葉説にて,Leuckart,Gellet,草川,山本,宇山氏等は中胚葉説なるも,實際發生學的研究を行へる學者の中にても,Nussbaum,Bernd,Szily,高橋,渡邊氏等は外胚葉説をとり,Huschke,Mihálkovics,Beauregard,Kessler等は中胚葉説をとれり。
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