文献紹介
前立腺肥大,他
pp.1095
発行日 1966年10月1日
Published Date 1966/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491204486
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1959年以来,炭酸,氷酷酸,グリセリンを含む溶液を前立腺内に注入して肥大症を治療しすぐれた結果を得た。
注射手技は会陰部の正中線に局所麻酔を行ない,指を直腸内に挿入し,前立腺尖におく。腰椎穿刺針を用いて1回量2〜3ccを注入し,5日間隔で繰返す。残尿のある患者では留置カテーテルを用いるが,一般には不要。注射によりかえつて数日間残尿が増悪する場合もあるが,これは1時的な前立腺の腫脹によるもので留置カテーテルを挿入して経過を観察する。その結果,尿閉,頻尿,残尿が緩和し,尿線の充実,前立腺の形態,硬度が改善される。注射された前立腺は肉眼的には変化を認めないが,組織学的にはわつかなfibrosisと壊死が認められる。引続いて前立腺の液化が起り吸収される。注射療法を受けた136例中,その1/3は2回の注射で治癒し,2/3は3回以下で,4/5は4回以下で治癒した。5回以上の注射療法を必要とした例は1/10以下であつた。注射後留置カテーテルを必要とした100例についてその3/5は12日以下であつた。留置カテーテルのために膀胱炎,尿道炎,副睾丸睾丸炎を併発した例もあるが,いづれも軽症であつた。5例に前立腺肥大症の再発を見た。再発例に対しては1〜4回の注射でいづれも治癒せしめた。注射による死亡例は1例もなかつた。90日以上の入院期間を要する例について手術療法と注射療法を比べるとそれぞれ4.21%,0.6%であつた。
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