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学会の民主化がさけばれてから20年になるが,少しも民主化されておらず最近になつて再び旧の様な状態になりつつあると思う。例えば文部省の研究費配分を見ても,貰つておる人は毎年同じ人ばかり,而も同じ人があつちでもこつちでも貰つておる。実際的に研究費が多くあるに越したことはないが,どうかすると驚く程貰つておることになる。自分の教室の研究費もあることであろうし,それを加えると一寸数千万円になると言つても過言ではあるまい。それではそれだけの研究をはたしてやつておるかと言えば決してそうでない。中には発表さえしなくて,一体はたしてやつておるかと思われることさえある。自分達ばかりで研究班なんて作つて,その内容をきいてみると大したこともなく,そんな事ならおれでもやつておると思つても,私みた様に未だに一前のウロローグとして認められておらないのはやつぱり私が皮膚科学より転学し,而も医学それも私立出身というためであろうか。そうした仲間には入れてもら得ない。或人にきいて見たら「桃梨物言はず道自ら通ず」ということを返事いただいた。此の事から考えれば,"おまえが研究班にでも入れられないのはおまえのやつておる研究がつまらぬのだ。もつといい研究をやりさえすればそれを認めてくれて,いつでも加えて貰えるのだ。だからもつと勉強しなさい"。という事だろうと思つて努力はしておるものの,生来愚鈍な私は少しも成績が上らず,泌尿器科学を専攻してから10年になるが,日暮れて道尚遠しの感がある。処が自分独りいくら勉強し,力んでも教室員達が勉強して呉れなくてはどうにもならない。研究テーマーを申してもやつて呉れないから,自分独りでやろうと思つてもなかなか進捗せず悲しくなる。而も自分ばかり研究費を使用する訳にゆかず,それかと言つて俸給をどんどんつぎ込むことも出来ず,自分専用の研究補助員一人雇うことさえ出来ない状態である。
一体それではどうすればいいかといえば皆目私には分らない。
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