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思いつくまま
三浦 祐晶
1
1北海道大学
pp.829
発行日 1959年8月1日
Published Date 1959/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491202618
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道産子の感想
最近ラジオやテレビ,映画などに北海道を舞台としたものや,北海道育ちの主人公が登場するものが眼につく様になつた。「雄大な大自然を背景にした豪華スペクタクル」だの,「正義に燃える荒々しい熱血漢」だのと宣伝は良いが,我々いわゆる道産子の眼でみると,いやに誇張され過ぎていてくすぐつたかつたり,気恥かしい思いをすることが多い。そして又これと全く対照的に,劇中登場人物が会社でヘマをやつて左遷されたり,失恋して淋しく流れてゆく先がやはり北海道なのである。現実に,夏になると本州各地からお出でになる多数のお客さんの中に,北海道を死に場所と心得て来る人がかなりいるそうであるし,又製薬会社の札幌勤務になつたプロパー氏が訪ねて来て,「とうとうこつちへ廻されてしまいました」などと御挨拶される。これには全く恐縮してしまう。
北海道以外に住んだ経験のない私にはよその土地の良さは分らないが,北海道の自然は実に美しいと思う。殊に5月,6月の樹々が一せいに芽吹いて新緑が燃えるばかりの頃は,天地に新しい生命が満ち溢れている感じがする。一方,北海道は住みにくいと云う声も多い。たしかに物価は高いし,雪解けのドロンコ道やスモツグ(煙霧)に悩まされる。ガス,水道は普及せず,煖房,燃料の苦労などが絶えずつきまとう。しかしこの様なことは政治のあり方一つでいくらでも解決がつきそうな気がするが,実際は仲々うまくゆかぬものらしい。
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