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I.まえがき
Pantothenic Acid(以下PaAと略記する)は生体の微妙な反応に欠くことのできないアセチル化補酵素(以下CoAと略記)の重要な構成分子である(Lipman et al. 1947,0lson 1648)。皮膚は一般にCoAの需要が高く,その損傷時には特にPaAが要求され,正常および疾病時にもCoAは不可欠の要素である。皮膚疾患々者の血中PaA量に関してはペラグラ,V. B2欠乏症において健康者に比して23〜50%低下するとの報告(Spies 1940)があり,教室の乾によれば皮膚疾患々者27例の血中PaA量はいつれも低値を示し,特に皮膚膠原病の全7例,皮膚癌,中毒疹,難治性脂漏性湿疹,病院壊疽,血管性皮膚萎縮症,壊疽性疱疹,接触皮膚炎,急性湿疹の各1例計15例では50%以下に減少し,その減少度は臨床症状の軽重と概ね一致するという14)。また同氏により実験的パントテン酸欠乏家兎では体重並びに血中PaAが減少し,それ減少度はクロトン油皮膚炎の発生によりさらに高度となり,皮膚生理機能も病態に傾くことが実証されている。PaAの適応疾患と症状については最近(昭和37年),酒井氏が総括しているが25),今日迄パント錠による流行性並びに血性肝炎の治験(今吉13)),パンカル注としての新生児黄疸,疫痢などへの使用経験(水沢20)),Pancal Gの各種肝疾患に対する治験報告(北山ら16))などの多くの報告があり,また特異なパントテン酸欠乏症の報告とその治験(田坂ら,平阪ら)に接する。
今回私らは,PaAとベータメルカプトエチルアミンが結合したもので,単にCoAの一部を構成するのみでなく,CoAの中でのPaAの変化の重要な中間物であり,従来からPaA自身がもつていない作用を有する補酵素とも考えられてきたPantethine(以下PaTと略記)を提供され皮膚疾患々者に投与して所期の治効をおさめ,また実験的PaA欠乏家兎に本剤を投与した際の血中PaAとアンモニア並びに皮膚機能の変動を検討しているので,現在までの結果をとりまとめて報告することにした。
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