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I.はじめに
皮膚機能と関連の深い消化器系臓器として肝臓の占める意義は誠に重大であるが,このことに関しては私たちも度々記載したので今回は省略することにしたい3)。従つて消化管と皮膚との関係に焦点をしぼりたいのであるが,上部消化管と肝臓とは解剖学的にも,発生学的にも,また機能的にも密接な関係にあることは明らかであるから,消化管に注目するとしても肝機能の影響を全く無視する訳にはいかない。現に小坂教授12)は肝機能障害時に消化管運動機能が形態的にも機能的にも,その障害の時期および程度によつて種々の影響を受けることを臨床的および実験的に追求し,また常習性便秘など消化管運動異常時に肝機能障害の生ずることを詳細に論述している。
ともあれ,消化管と皮膚との関連の密接であることは古くから経験的によく知られているが,学理的裏付けに乏しい。確かに発生学的には皮膚と消化管とは関係がない訳であるが,口唇および肛門の2ヵ所において皮膚と粘膜は移行しているから,皮膚を身体の外表面とすれば消化管粘膜面はその内表面と考えてよく,両者の間に何らかの共通するものであつてもよいと考えられる。例えば前者が外的環境から種々の刺激を受けるように,後者は食物による機械的,化学的あるいは理学的(熱)な様々な刺激を受けており,ともにこれら諸刺激に対して,よく順応するという類似点をもつ。また食事後に腹部の血行が促進されて,皮膚温の上昇すなわち温感を覚え,冷水の飲用に涼感を期待するという日常の習慣も外表面(外皮)と内表面(内皮)の機能的共通面であろう。このように考えると,Brown-Sequardの共感反応の法則Law of consensual vascular reactionすなわち,「限局した場所に加えられた血管運動刺激は身体の全表面に同種の反応を起し,腸管も同調」という付則を加えることもなく,またDar-tre Moratの末梢・内部血行拮抗の法則に胃腸管壁の血行を例外とする必要もなくなる。
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