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I.緒 言
最近に於ける酵素化学の進歩は目ざましいものがあり殊に酵素化学的診断法としての臨林応用は現在検査室で行われているだけでもアミラーゼ,コリンエステラーゼ,アルカリおよび酸フォスファターゼ等多種にわたり諸種肝疾患の鑑別,心筋梗塞,骨腫瘍,前立腺症の転移等の診断に広く利用されている1)。しかし酵素の臨牀応用に関しては未だ充分明らかでなく今日治療に用いられているのはPeptidase群が主でありその他2, 3の試みがなされているにすぎない。新しい酵素学の知識に基づいた酵素療法の注目されだしたのはごく最近であるが,これは何かある薬物によりある種の酵素又は酵素系の活動を抑制調節することにより器管,組織の機能の正常化を図るというものであり,もう一つは酵素そのものを使用して治療を行うというものである。このうち後者が真の意味の酵素療法と考えてよいと思うが,とに角現今では使用される酵素製剤の種類は少いし,その応用範囲もさほど広くなく,又,適応も必ずしも明らかでない状況である。しかし,この酵素療法の導入は治療医学に於ける新しい一つの傾向といえよう。用蛋白分解酵素は従来経口投与による消化補助剤,局所使用による組織除去剤として使用されてきた。又線維素溶解作用と共に抗炎症,抗浮腫作のあることが明らかにされた。Trypsinは古くよりPurkinje,Pappenheim,Claud-Bernardt及びCorviss'art2)により知られKuhne3)によりTrypsinの名称が与えられた。α-キモトリプシンは1913年Vernonに発見され1932年Kunitz,Northrop4)により結晶化されたEndopeptidaseである。1956年Barceloにより治療効果を発表されて以来酵素の臨床的研究がクローズアップされるに至つた。しかしこれらの酵素蛋白殊にα-キモトリプシン療法は従来主として外科,産婦人科,内科(呼吸器)系領域で応用されていた。皮膚科領域に於ても従来広く応用されている副腎皮質療法の卓効は見のがすことはできないが再発,二次感染の問題が伴うこと多くこの難点の解消の目的でα-Chymotrypsinの応用が試みられ感染傾向の改善,副腎皮質ホルモンに劣らない抗炎症効果等みるべき点が多いと考えられ,期待をもたれているが本療法の皮膚科的応用に関しては未だ充分の報告がみられていない現況である。私は今回α-キモトリプシン製剤であるキモターゼを使用し,2, 3炎症性皮膚疾患に応用し見るべき知見を得たので報告する。
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