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I.緒 言
最近の酵素化学の進歩は目ざましいものがある。蛋白分解酵素は従来経口投与による消化補助剤,局処使用による壊死組織除去剤として使用されてきた。また本酵素は線維素溶解作用(線溶作用)と共に抗炎症,抗浮腫作用のあることがわかった。この中でMedawarの研究以来Trypsinの皮膚に及ぼす影響に関する研究が進められTrypsin,Chymotrypsinに関する注意が喚起されその臨牀効果が検討された。
一方抗生物質,化学療法剤の進歩により潰瘍,壊疽,膿瘍等の治療は非常に容易になつたが汚染損傷部位に充分量の化学療法剤を与えても組織内に介在する壊死組織,線維素苔,血塊,異物等により治癒機転の遅延をみるのはよく知られている事である。この創傷治癒の障害となっている壊死組織,線維素苔,血塊等の除去については観血療法,自然脱落等によるのをまつ状態であつたが頑固な壊死組織の除去は容易でなくまた感染その他の障害を伴うことが多かつた。このため酵素を利用してこれら壊死組織を除去せんとする試みが可成り以前よりいろいろ検討されてきた。現在組織溶解の目的で医用に供されている酵素はTrypsin剤とStreptokinase(SK),Streptodornase(SD)剤である。壊死組織の消化の目的でJohn HunterがTrypsinを使用した事実に始り1951年Loetting等によりすぐれた壊死組織溶解剤であることが証明された。また1953年動物,人体実験でTrypsin筋注で炎症を鎮静させ浮腫を吸収させることを証明して以来Varidaseを含む各種proteolytic enzymeが血腫,浮腫の消褪,壊死組織融解に有効であるとの臨牀的研究が発表されわが国でも多くの報告がみられている。
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