紹介
熱傷におけるムコール菌症,他
pp.677
発行日 1962年8月1日
Published Date 1962/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491203328
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熱傷の細菌感染はあらゆる抗生物質を与えてもなははだ屡々発生する。Streptococcus pyogenesによる感染は通常防止できるが,他の細菌,たとえばStaphylococcus au-reus,Psendomonas pyocyanea,その他種々大腸菌様細菌は依然として危険である。広汎な熱傷の患者でも多くは輸液療法でショック期を脱する事ができる。しかし敗血症あるいは肺炎が熱傷面に増殖した細菌から瞳々発生し,患者の多くは死に至る。広スペクトル抗生物質で治療した他の疾患患者と同様,熱傷患者(特に小児)は喉頭や消化管のカンジダ症を起し死の転機をとることがある。幸に熱傷を受けた組織は酵母や糸状菌の感染を起し易くないが,Rabinは真菌感染によつて死亡した2例を報告している。その患者は広い熱傷を有するもので,重い全身症状を呈し,敗血症の高熱発作を示した。治療として種々の抗生物質が与えられた。受傷後第2〜3週に熱傷面に黒色壊疽が現われ,このものは拡大していつた。真菌感染は臨床的に思い付かなかつた。しかし死後剖検により壊死組織の切片中に幅広い分枝性の,非隔壁性菌糸を認め,その形態からこの真菌症はムコール菌症と考えられた。また髄膜と臓器への菌の蔓延も証明された。熱傷患者における全,身性ムコール菌症の報告は以前にも発表されている。
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