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海外トピツクス
pp.226-227
発行日 1958年2月1日
Published Date 1958/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491202200
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膀胱腫瘍と尿流
進行した膀胱腫瘍で,既に根治的手術を施行しえなくなつた場合,止むを得ず尿路変更だけ行つて患者を激しい排尿痛と膀胱テネスムスから解放している。併し,尿路変更を行つて膀胱腫瘍が小さくなつたという事実がPearseによつて報告されて以後,同じ事がDavis(1948),Trabucco(1948),Goldberg(1950)等と相継いで記載された。Brosigもこのような症例に遭遇して,尿路変更を行うと膀胱粘膜が尿中の発癌物質により刺激されなくなるので自発的に腫瘍が消退するのであろうと考えて,膀胱腫瘍の発生と尿流との関係を動物実験によつて確かめた。
Brosig(1957)は家兎を2群にわけて,発癌物質による膀胱腫瘍の発生率を比較した。第1群では膀胱を開いて横に連続的な粘膜縫合を行い,上下の2室に分けた。即ち上の部分は尿流に触れず,下の部分のみが尿流に曝されるようにして,上の部分に発癌物質を含んだ蝋球を挿入した,第2群では膀胱を開いて,2室に分けずに発癌物質を入れておいた。最初発癌物質としてBenzpyrenを使用した場合,第1群で約200日後4例中1例に小乳頭腫の発生を見た。第2群の発生は5例中3例であつた。次に現在最も強力な発癌作用があるといわれるMethylcholanthrenを使用してみると,第1群では130日後に33%(15例中5例),第2群で80%(15例中12例)に乳頭腫の発生を見た。
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