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海外トピツクス
pp.1049
発行日 1957年11月1日
Published Date 1957/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491202108
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カドミウム塩と睾丸
近年カドミウムが特異な生物学的作用をもつている事が知られ,神経伝導或は心筋への影響について種々の報告がなされている。更に,この作用機序に関してカドミウムが酵素系に抑制的に働くためであることが知られてきた。最近,Parizek & Záhor(1956)はカドミウムが睾丸に特異な作用をもつている事を指適した。カドミウム塩の非経口的投与によつて睾丸に変化を来す事実は既に1923年Schwartze & Alsbergにより記載されているが,その後睾丸に対する作用の研究はほとんどなされていなかつた。Parizek & Záhorはカドミウム塩の極く微量の非経口的投与数時間で睾丸に著しい肉眼的変化を起す事を確かめ,1957年Parizekは更にこの事実を組織学的に追究し,甚だ興味ある成績を収めた。
カドミウム塩は塩酸塩でも,乳酸塩でも注射に数時間以内に睾丸の急激な変化,即ち,腫脹,変色を招き,やがて睾丸は堅く萎縮してしまう。この変化は体重1kg当り0.02m. mol. の微量でも惹起される。組織学的に見ると最初に睾丸組織の充血,浮腫,次いで精上皮の破壊がおこり,間質にも出血,血管栓塞並びに炎症性反応が著しくなる。注射後10日目には睾丸全体がエオジン好性の物質でおきかわつてしまう。
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