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海外トピツクス
pp.332-333
発行日 1951年7月1日
Published Date 1951/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200550
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リール黒皮症と副腎
リール黒皮症は,日本にては女子顏面黒皮症と云われ,その原因は鑛物性油脂中に含まれている光力學的物質であると考えられている。歐洲にては中毒性のものと考えられ食物と關係があり,砒素黒皮症とペラグラとの中間に位するものとされていたが,最近は鑛物性油脂を原因と考える人もある。こゝにはリール黒皮症を弗素の中毒と考えるSpiraの説を述べてみよう。患者は66才の元文官で,少年時代より年に3〜4回インフルエンザ樣疾患に惱む以外健康であつたが,こゝ數年來皮膚色素沈著を訴えた。診ると顏面,咽喉並に手の背面に褐色乃至黒色の著色斑と脱色斑が見られ,爪甲は縱裂症,横溝症を呈した。血壓は低く,血中尿素,カリウムは増加,血清クロール,血糖は減少,尿中の17-Ketosteroidsは減少を示した。他方,患者の常用飮料水中にはAs2O3は檢出されず,少量の弗素が證明できた。以上の所見中,色素沈著,血壓低下,クロール減少,血糖値低下は慢性副腎障碍を示し,17-Ketosteroidsの減少は副腎皮質の障碍を意味する。血中の尿素増加は副腎障碍の時に現われ,他方,弗素は組織の破壞,次いで尿素形成の過剩を來たす。頤部の脱毛,爪甲の變化は副甲状腺の機能低下を示すもので,石灰の減少は弗素の作用にて現われ,石灰の減少は自律神經の不安定状態をもたらす。
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