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ドイツ通信
樋口 謙太郎
pp.1047
発行日 1957年11月1日
Published Date 1957/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491202107
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ラジオ
私は主任教授の厚意で,クリニーク内の医師用の部屋を一つ都合つけてもらつて住んでいるのですが,午後から夜になると何もすることがなくて退屈です。それでラヂオを買いたいと思いました。ドイツ語の理解力を高める役にも立つかと考えたからです。ラヂオ屋には色んなのが沢山並んでいますが,一般に高価でちよつと手が出ません。たまたまあるシヨーウインドーで格安のものをみつけました。早速訊ねますと,依託販買のものらしいのです。しかしかけてみてもうまく音が出ませんでした。ほかに安いのはなにかと聞きますと,新品で100マークというのがありました。ただしこれも三球というやつで,音は出ますが,よい具合に調節ができません。店員の方で止した方がいいですよという始未です。それでラジオのことは半ば詮めていましたところ,わざわざ買わなくとも月極めで借りる手のあることを知りました。私のように短期間滞在するものにはその方が好都合です。新品で250マークぐらいのものが月10マークで借れるというのです。もちろん高級な機械ですと,月20マーク以上支払わねばなりません。安い方を借ることにして申込みました。ラヂオが来てスイツチを入れると全く偶然でしたが日本人のI嬢のピアノ演奏がはじまりました。曲はシヨパンでした。あとで聞いたところによりますと去年の暮に録音したのだそうです。
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