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初感染淋疾の最近に於ける傾向
大野 宰
1
,
加藤 晥
1
1愛知縣立中村病院
pp.643-645
発行日 1953年10月1日
Published Date 1953/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491201067
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ペニシリンを初め各種の抗生物質製劑が潤澤使用されるようになつた咋今顯症梅毒患者の外來を訪れる機會は誠に尠くなつたが,淋疾でも同樣昔日に於けるが如き急性症を診る機會は次第に減少,これに反し感染機會後比較的永い潜伏の後非常に緩慢な症状を以て發現す初感染淋疾が漸次増加して來た。その主な症状としては感染機會後10乃至20日或いはそれ以上を經て尿道に於ける不快感,時に早朝に於ける粘液膿樣分泌の排泄,又は何等の自覺症状もなく下衣類に膿樣のシミの附着しているのを初めて氣附いたと云うような誠に緩慢なものである。試みにかかる患者げ尿道分泌物を検鏡してみても膿樣,雑菌の他多くは細胞外に散在する双球菌を認めた程度で,これのみで確實な診斷を下すことは不可能であつて,その決定は殆んど培養検査に依存してい。
淋疾のかゝる傾向に關しては既に原が最近に於ける急性淋疾の臨床的觀察と題し昭和26年1月より同年5月迄の80症例に就て潜伏期間の延長その症状が緩慢となつて來た事を指摘している,特にその潜伏期間に就てはEisenman,Finger,Lanz,Saigraijoffとの間に比較百分比を出し感染機會後10日以上を經たものが25%も占めていると報告しているのも興味深い。これ迄吾々の經驗した潜伏期間の内最も永かつたのは35日であつたが,原のものには48日2例,58日1例と云うの含まれている。
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