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抗眞菌劑Triphenyldodecylphosphonium bromidの試驗管内および臨床的效果
田沼 葎
1
,
黑田 和夫
1
,
中村 亮
1
1順天堂大學醫學部皮膚科教室
pp.609-612
発行日 1953年10月1日
Published Date 1953/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491201058
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逆性石鹸が著明な殺菌作用を有することは知られているが,現在一般に使用されているものは窒素原子を中心とした第4級アンモニウム鹽またはピリジニウム鹽などの高分子量有機鹽基性誘導體である。この逆性石鹸の類系としてその窒素原子のかわりに中心原子を燐としたホスホニウム鹽,硫黄を中心としたスルポニウム臨,酸素を中心としたオキソニウム鹽或は砒素を中心としたアルソニウム鹽などの化合物があり,いずれも殺菌力を有するが,その化學的の形によつてこの作用に著しい差異がある。逆性石鹸およびその類系化合物は水に溶解して解離する時,分子中のハロゲンまたは酸根は陰イオンとなり,比較的高分子量の鹽基性原子團は陽イオンとなつて効果を現わす主要部分となる。この陽イオンの部分が負帶電性の蛋白質と難溶性の鹽を形成するのであるが,微生物に對しても同樣の作用によつて凝固作用を發揮しこれを不活性化する。すなわち,逆性石鹸およびその類系誘導體の陽イオンの部分が微生物體の酵素蛋白或はリポイドに對して強い親和性を有することが殺菌劑としての作用の基礎であると考えられている。
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