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ストレプトマイシン療法によつて誘發された閉塞性腎結核の1例
市村 平
1
1國立熊本病院皮膚泌尿器科
pp.557-560
発行日 1952年11月1日
Published Date 1952/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200837
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緒言
ストレプトマイシン(以下SMと略す),パス,チビオン等相次ぐ抗結核劑の出現に件つて,尿路結核の治療成績が急角度の上昇を示しつつある事は今更贅言を要しない所であるが,現段階に於ては遺憾乍ら慢性腎結核を完治せしめ得ない事も亦周知の通りである。即ち本療法の奏效する場合は,1)患腎剔除前後の膀胱結核,2)腎尿に結核菌と僅少の膿とが證明され,未だX線像に破壤性病變を發見し難い所謂臨床前期に属する腎結核等が期待出來る治療對象であり,更に二次的の意味では手術的侵襲で誘發される胸部結核等の増悪防止或は術創の二次感染による痩孔の防止對策等も見逃せない本劑慮用の利點であるが,既に両側に明かに病變を證明出來る両腎結核では──之は實際問題として屡々實施される傾向があるが──殆んど治效を望み難い許りでなく,本療法に依つてひとり尿管が瘢痕性狭窄治癒を螢み,爲に却つて夫より上部の尿路乃至腎盂が外部と交通を絶つて所謂閉塞性膿腎を招來する恐れが多分にあり,最近著者はX線像には未だ極く初期の病像を示す腎結核に療法を施行し,月餘にして極めて高度の膿腎となつた1例を經驗し,本療法の適慮に就て些か知見を得たので茲に報告する。
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