--------------------
海外トピツクス
pp.381-382
発行日 1950年9月1日
Published Date 1950/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200400
- 有料閲覧
- 文献概要
毛髪のX線的研究
現在X線で研究しうるあらゆる物質がその檢査の對象となっているが,毛髪もまた例外ではなく,それによつていろいろの現象が説明されるようになった。毛髪は,硫黄を高度に含む,はなはだ安定な蛋白質であるケラチンから成るが,その分子的性状がX線廻折像によつて明らかにされた。こゝにその秀子構造について紹介しょう。X線廻折によると哺乳類の毛,爪,蹄,角等はすべて類似の構造を呈し,その間の差異は量的のものにすぎない。それはいわば分子的の糸と考えられ,普通の撚糸が可視的纎維から成るのに對して,それは不可視的の分子の纎維からできているとみてよい。その分子的纎維は長さが幅の何百倍かあり,毛髪においてはほゞ縦に走る。これ毛髪の縦に裂け易い所以である。それが水を吸うと,普通の撚糸の場合と同樣に,分子的纎維の間隔が廣がるので縦より横に膨脹することが著しく,人の毛髪では横の膨脹率が14%であるのに,縦のそれは1〜2%,である。この分子的纎維はポリペプテイド鎖といわれ,次の化學式を有し,その中のR',R'',R'''等は側鎖で,—H,—CH3,—CH2—CH2—COOH等1價の基を表わす。
…—NH-R—CH-CO-NH-CH-R''—CO-NH-R'''—CH-CO—…
ポリペプテイド鎖は主鎖をなして毛髪の長軸に沿って互に並び,個々の主鎖の間は側鎖によって結合し,下に示すいわゆるポリペプテイド格子
Copyright © 1950, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.