連載 症例で学ぶ非結核性抗酸菌症・22
肺非結核性抗酸菌(NTM)症の背景に隠された基礎疾患—気管支拡張症の鑑別
朝倉 崇德
1,2
,
森本 耕三
3
,
森野 英里子
4
,
倉島 篤行
3
,
長谷川 直樹
5
1慶應義塾大学医学部呼吸器内科
2国立感染症研究所ハンセン病研究センター
3結核予防会複十字病院呼吸器内科
4国立国際医療研究センター呼吸器内科
5慶應義塾大学医学部感染症学教室
pp.702-707
発行日 2019年11月1日
Published Date 2019/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1437200316
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症例① 70代男性
現病歴:慢性閉塞性肺疾患(COPD),陳旧性心筋梗塞,高血圧,脂質異常症,糖尿病の既往があり,心室内血栓に対して抗凝固療法施行中の方.COPDに対しては末梢血好酸球増多(8%)を根拠にLAMA,ICSで加療していた.時折咳・痰を訴えていたが,日常生活には支障がなかった.入院6年前に一度喀痰からM. aviumが検出されたが,その後は検出されず経過観察されていた.入院3年前に喀痰からM. aviumが2度検出され,肺MAC症と診断され,当院を紹介受診された.その後,年に1回程度M. aviumが検出されていたが,呼吸器症状は安定し,画像所見にも特記すべき変化がなかったため,無治療で経過観察された.今回,1週間の増悪する咳・痰・mMRC 1の労作時呼吸困難が出現し,胸部画像所見(図1,2)の増悪がみられたため精査加療目的に入院した.入院時のCT所見からアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)が疑われ,気管支鏡検査を施行した.アスペルギルス沈降抗体陽性・右中葉・左B6に粘液栓を認め,その病理像にて好酸球浸潤・糸状菌があったため,ABPAと診断した.気管支鏡検体から抗酸菌は検出されなかった.プレドニゾロン,イトラコナゾールによる治療を開始され,その後は肺MAC症の検出はなく経過している.なお,経過中の血清IgE値は正常範囲内で,抗GPL-core IgA抗体は陰性であった.
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