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I.はじめに
ヒトを含む哺乳動物の中枢神経系では多種の細胞群が部位特異的あるいは細胞種特異的な分化を遂げ,神経回路網を形成する.神経系の発生においてneuronとgliaの細胞起源に注目した研究は古くからみられ,一元的あるいは二元的だとする論争の歴史15)やBaileyとCushingによるneuronとgliaの細胞系譜に関する図式2)がよく知られている.その後,Raffら44)は免疫学的手法を用いてglia細胞分化の系譜を確立しType 1,Type 2 astrocyteおよびO−2A progenitor cellの存在を証明した.また,最近注目される研究として,1995年neuro—gliaのprogenitorにおいてneuronとgliaの分岐のスイッチを担う遺伝子(glial cells missing(GCM))の存在が明らかにされた16,18).このほかにも,正常なglia細胞の分化に関する研究については,分化における遺伝子発現とその制御など数多くの報告10-12,30,33,37,62)がみられる.一方,glioma細胞は,その起源,あるいは増殖能・運動能・浸潤能など解明されるべき多くの課題がある.最近目ざましい発展を遂げている分子生物学の成果は,これまでのgliomaの病理学的分類21)にも大きな影響を与えている.また,臨床材料を用いたglioma組織の分子生物学的解析技術,培養glioma細胞に対する遺伝子の解析や導入およびその発現抑制といった研究分野6,22,41,43,46,57,68)への発展につながっている.これらの成果に立脚して遺伝子レベルでのgliomaの治療法開発への先駆的な研究1,7,29)も始められている.本稿では臨床応用を目指したglioma細胞の分化誘導に関して,1)薬剤による分化誘導の試み,2)分化誘導に関与する細胞内情報伝達機構の解析,3)分化誘導に関連する未知遺伝子の探索の3点に話題を絞って,それと関連した最近の基礎的知見をreviewし,併せて教室で行っている培養glioma細胞の分化誘導に関する検討結果を紹介する.
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