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I.はじめに
手指運動や光刺激など機能負荷により賦活された脳局所の血流増加現象は詳しく研究されており1,2),高次機能も含めたさまざまな負荷による脳のfunctional map—pingがPETで得られている.また臨床にも応用され,eloquent cortex近傍病変に対する術前の機能局在同定に利用されている3,4).この原理はSPECTにも応用され多くの研究報告があり,われわれの施設でも中心溝同定法,機能局在同定法として臨床経験を報告してきた5,6).SPECT装置は全国で1000台以上普及しており,SPECTを用いたfunctional mappingは多くの施設で実施できる検査法といえる.しかし,臨床応用にあたってはさまざまな問題点があり,SPECTをよく理解して用いる必要がある.
機能負荷による局所脳血流の変化はあまり大きなものではない.血流増加率の高い運動負荷や閃光刺激のような大脳一次領域の機能負荷でも20-30%しか脳血流は増加せず,また,二次領域や高次領域(記憶,計算,言語)の血流増加率となると数%程度と低いので,感度の高いSPECT装置と測定方法を用いる必要がある.血液脳関門が破綻した病変部は薬力学的に均一ではなく,脳血流トレーサーの分布が局所脳血流に比例していない可能性もある.また市販の脳血流トレーサーも固有の性質を持っており,違いをよく理解しておく必要がある.このようにSPECTを用いたfunctional mappingを臨床応用するには,脳血流トレーサーの薬力学的動態とSPECT装置の性能を考慮に入れた,脳血流の変化をよく反映する測定法が必要である.SPECTの空間分解能は機能局在の同定には不十分なので,MRIやCTなど脳解剖画像を参照する必要がある.本稿ではSPECTを用いたfunctional mappingの特徴を以上に述べた基礎的事項より解説し,最後に症例を提示する.
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