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Ⅰ.はじめに
近代脳神経外科手術法としての覚醒下脳神経外科手術の最初の記載は,1886年のSir Victor Horsleyによるてんかんの治療であった16).皮質の電気刺激を行っているが,当時は脳波記録の技術はなく焦点診断のために電気刺激を用いたようである.1860年から1870年にかけてBrocaやWernickeによって言語機能領域が発見され,大脳において機能局在が存在することが明らかになってきた時代である.
その後1950年代になり,コデインなどの鎮静剤を鎮痛剤に適宜組み合わせることにより,全身麻酔から必要なときだけ覚醒状態に変更できるようになる28,32).この麻酔法を用いてPenfieldらは電気刺激による部位別運動感覚支配領域を詳細に報告している29-31).その局在はBrodmannが報告した大脳皮質の細胞構築による47野の分類と綿密に相関しており,現在でも広く用いられている(Fig. 1).
1960年代になると,NLAが導入されて気管挿管することなく覚醒下手術が可能になった.主に難治性てんかんの治療においては,覚醒下手術が有効な麻酔法として確立され1,24),術中皮質刺激による言語関連野の同定など新たな知見が得られた27).しかしながら,麻酔管理の危険性や患者への負担が大きく,広く普及するには至らなかった.一方で,てんかんの焦点検索のために硬膜下電極留置が可能となり,病棟で十分な検査時間をとって皮質電気刺激や準備電位記録を行い,運動や言語に関する新たな関連野が同定された19-22)(Fig. 2).
1992年には,プロポフォールによる静脈麻酔を併用した覚醒下開頭手術が報告された34).この麻酔法は,覚醒時の意識の回復が速やかで,さらに悪心・嘔吐が出現しにくいことから覚醒下開頭手術に適している12,17).ここ十数年の間に,術中覚醒下に脳電気刺激による脳機能マッピングを行い,さらに摘出に際して神経機能評価を行う手技が確立された2,4,11,15,36,37).このような麻酔法と電気刺激法の進歩に伴い,覚醒下開頭手術はその臨床的有用性が認められ広く普及しつつある.
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