扉
脳神経外科で「小児は成人のミニチュアではない」と主張すべきか?
坂本 博昭
1,2
1大阪市立総合医療センター小児脳神経外科
2大阪市立大学大学院医学研究科脳神経外科
pp.1103-1105
発行日 2020年12月10日
Published Date 2020/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436204332
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小児科領域で「小児は成人のミニチュアではない」という表現が用いられるのはご存じでしょうか.これは小児の専門性や特殊性を強く主張する意図をもって用いられます.小児脳神経外科に長く携わってきた私としては,脳神経外科ではこの点を現状ではあえて強調しないほうがよいと思います.この考えに至った理由を述べたいと思います.
私が新生児の脊髄髄膜瘤の修復や乳児のシャント手術を最初に経験した頃は,小児例は体が小さいのみならず,皮膚は薄く,頭蓋骨・脊椎は十分に骨化せず軟らかいので,確かに「小児は成人のミニチュアではない」と感じました.しかし小児例の手術を多く行うようになって,顕微鏡下の脳や脊髄は,乳幼児であっても成人例と同じようにみえることに気づきました.さらに,松果体部,脳室内,トルコ鞍上部などの脳深部,あるいは脊髄髄内の病変の術野は,小児例では浅く,顕微鏡下での手術操作が行いやすいため,「小児は成人のミニチュアである」と感じるようになりました.また,小児の脳は牽引しても壊れにくく,動脈硬化がないので血管の操作も容易です.このように,「小児は成人のミニチュアである」という点に助けられて手術ができると意識するようになりました.
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