主張
主張のしかた
pp.5
発行日 1952年10月10日
Published Date 1952/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200369
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自分の意思や,考えていることを,言葉に直して他人にわからせるということは,言葉それ自体にさえむつかしさを覚えますのに,更にその上人にわからせる,他の人に了解させるということになると,その使う言葉や,言いまわし,声の大小,アクセントのつけ方など,一つ一つ非常に重要な要素になつて来るので,大そうむつかしくなります。昔から,「円い卵も切りようで四角,ものも言いようで角がたつ」といわれていますが,言い現わされたそのあり方は四角でも三角でも,円い卵は依然円いのでなければ意味がないのですから,角をたてないように,との気配りから表現された言葉によつて相手のうけとるのが,全く言わんとすることと違つたものを受けとつてしまつたのでは,何にもならないので,言わんとすることは,その内容はちやんと相手にも通じさせるように,而も角ばらないで素直に言いまわすことに訓練が必要なのだと思います。
人には種々の性格があつて,非常に決定的に断定的にものをいう人があります。「あの人はそういう性格なのです」とか,「それは,こういうものなのです」というふうに,ピシピシときめつけてしまういゝ方をするのがありますが,これはきいていてもあまり気分のよいものではありません,まして,それが当の相手の身になつてみれば,尚更で,非常に高慢な態度にみえます。
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