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本号の「扉」には,東京慈恵会医科大学の谷諭教授から,スポーツ医学について寄稿いただきました.スポーツにおける頭部外傷に関して,昨今「脳振盪」が大きくクローズアップされておりましたが,現在ではさらに慢性外傷性脳症の病態解明と予防が最重要課題であるとのこと.東京オリンピックを迎えるにあたり,もっと脳神経外科医がスポーツ外傷に関心をもって,社会的発信を行ってもよいのでは,と提言されています.総説には,大阪市立総合医療センターの小宮山雅樹先生の「発生・解剖・遺伝からみた脳血管病変」が掲載されています.まず脳血管の部位別発生を概観し,血管病変を構築と構成要素の観点から記述し,さらに発生・遺伝に関連する各脳血管疾患の概略が述べられています.大変教育的で,発生に関しては専門的な内容ですが,これらを理解しない限り血管奇形や血管性腫瘍の本質的理解には至らないものと再認識させられます.連載の「脳腫瘍の手術のための術前・術中支援」では,大阪市立大学の後藤剛夫先生が,脳幹部海綿状血管腫と斜台部髄膜腫に対する経錐体到達法について,きれいなシミュレーション画像と術中写真を付して,症例を提示しながら簡潔にまとめられています.また,臨床研究が2編,「第Ⅷ神経血管圧迫症の診断に寄せて—臨床的特徴のスコア評価—」と「透析患者の頚部内頚動脈狭窄症に対する内頚動脈内膜剝離術(CEA)の治療戦略と治療成績」が掲載されています.いずれも日頃の診療で遭遇する疾患や手術であり,実臨床に役立つ内容です.特に第Ⅷ神経血管圧迫症に対する微小血管減圧術は,未だ一般的に普及しているわけではありませんが,その原因が診断の難しさにあることからスコア評価を試みた報告です.実際術後にめまい,耳鳴,難聴が改善する患者も多く,脳神経外科手術の“販路”拡大のためにも,今後さらなる研究の進捗を期待します.そのほかに6編の症例報告も掲載されています.
旧年は,英国のEU離脱,トランプ米国大統領の選出など,何かと話題の多い1年でした.本年の社会情勢がどのようになるのか不透明です.ご多忙の中,本号にご寄稿いただいた先生方に深謝申し上げますとともに,ご発展を祈念いたします.
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