- 有料閲覧
- 文献概要
さまざまな年齢層から構成される大学で業務をしていると,実にいろいろな声を耳にします.右耳からは「若い先生たちはエビデンスやガイドラインだけを重視してまったく応用が利かない」「海外留学を志す医師が少ない」「原著論文や英語の教科書を読まない」「手術は教わるものではなく見て覚えるもの」等々.一方,左耳からは「簡単な教科書が欲しい」「雑用ばかりで手術をさせてくれない」「何も教えてくれない」「給料が安い」等々.個人的には,いずれの意見も「中らずと雖(いえど)も遠からず」ですが,両者の立場からすれば,その意見は互いに受け入れられず,真っ向から対立することがしばしばあります.
Evidence based medicine, informed consent(IC),guideline……少なくとも自分の研修医時代にはなかった言葉が,いつしか耳にするようになり,特にガイドラインは,今ではさまざまな治療方針を決定する上でその根幹となっています.いずれも,若い世代の先生方は当然のことのように受け入れています.情報量も膨大で,毎年のごとく,欧米を中心とした圧倒的なサンプル数による大規模臨床研究の結果がmajor journalに公表され,ガイドラインの改訂が行われています.現在では脳神経外科領域においても細分化され,それぞれの領域で専門医・認定医制度が準備されつつあります.Major journalの論文といえども,すべての領域を網羅することは不可能でしょうし,手術症例数も豊富でセンター化されている都心部の施設ならまだしも,経験できる症例が限られ,人員不足の地域医療を担う施設(たとえ大学であっても)においては,興味がある領域であっても,ガイドラインの基になる原著論文を精読して,さらにその内容を批判的に吟味するといった時間的余裕もなくなりつつあります.手術以外にも,さまざまな検査においてそのつどIC取得が義務化され,その業務だけでも膨大です.当然,電子カルテですべて記録をしっかり残すことも要求されます.若い世代の先生方に求められる業務は増加の一途をたどります.
Copyright © 2019, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.