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先日,アメリカ合衆国第45代大統領ドナルド・トランプ氏の就任式が行われた.アメリカの大統領選挙は日本のみならず世界の大多数の人々が予想もしない結果であり,アメリカの政策は自由主義経済圏のリーダーから自国の利益優先へと転換された.私の若い頃は自由・公正,豊かで,世界の中心であったアメリカに憧れ,私自身,実際に夢を叶えて2年半の留学生活を送ることができた.トランプ大統領のアメリカには果たして憧れが抱けるであろうか.若い先生の海外留学が減少している現在,留学への意欲をさらにそぐことにならなければよいがと危惧している.
本号の「扉」では,定年退官を間近に控えた徳島大学の永廣信治教授から「脳神経外科医の心技体」というテーマで,柔道における先生の豊富な経験から脳神経外科医の心がけについて含蓄のあるお話をいただいた.「解剖を中心とした脳神経手術手技」では,東京都立神経病院の森野道晴先生らが経シルビウス裂到達法による低侵襲な海馬多切術の手術手技をわかりやすい図とともに提示され,手術症例の記銘力温存も良好であったことを示された.「研究」では,福岡みらい病院の宮城靖先生から,ジストニア振戦に対し8極の接触子の電流を独立して細かく制御できるVerciseTM DBSシステムを使用することによって,副作用を回避しつつ最大限の効果を得られることが示された.また,連載「脳腫瘍の手術のための術前・術中支援」では,佐賀大学の河島雅到先生から頚静脈孔近傍腫瘍に対する開頭術について,詳細な外科解剖に基づきわかりやすく解説いただいた.「脳神経外科診療に役立つ薬物療法の知識」では,岡山大学の菱川朋人先生らに「脳血管攣縮に対する薬物治療」について解説していただいた.そのほかにも,脳神経外科の各分野からさまざまなテーマの7編の症例報告が掲載されており,充実した内容となっている.専門外の分野の論文にもぜひ目を通していただき,脳神経外科の知識を深めていただきたい.
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