- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
この編集後記の執筆はここ数年,年末・年始の時期に回ってくるため,先の1年を振り返り新しい年を迎えることにもなる.昨年の最大の衝撃的な出来事は,何と言っても11月13日にパリで発生した同時多発テロであろう.エジプトのアスワンで行われた学会から帰途につく朝に,このニュースを知って衝撃を受けた.思い返せば2001年の9.11米国同時多発テロもオーストラリアのホテルに到着直後であり,海外の学会参加中であった.実は,昨年9月に久しぶりにパリを経由してフランスのディジョンを訪れた際には,のどかなフランスの小都市を満喫したのだが,それからわずか2カ月足らずの出来事であった.このような許し難い暴挙に世界がどのように立ち向かって行くのか,今年は問われる年となるであろう.
本号の「扉」では,阿部竜也先生が「医学の進歩と終末期医療のあり方」というタイトルでご寄稿くださった.昨年10月にカリフォルニア州で可決された尊厳死法案は,2014年11月に29歳で衝撃的な尊厳死をとげた悪性脳腫瘍患者のブリタニー・メイナードさんがきっかけとなっていたことを指摘している.改めて脳神経外科診療と尊厳死,終末期医療のあり方について考えさせられた.乾登史孝先生らによる研究論文では,稀なsupracallosal portionの前大脳動脈瘤が全例accessory anterior cerebral arteryを伴っていたという興味深い結果を報告している.また,清水曉先生らのテクニカルノートでは,術中の吸引管落下防止のための伸縮式ストラップを用いたおもしろいアイデアが紹介されている.連載の「脳腫瘍Update」では,第4回として宇塚岳夫先生らから「乏突起膠細胞系腫瘍」の最新知見について,遺伝子解析を含めわかりやすい解説をいただいた.そのほかに,症例報告も7編掲載され,外傷,脳血管障害,血管内治療,シャント迷入による難治性吃逆への対応,海綿状血管腫に対する定位的開頭術,非特異的腰痛に対する上殿皮神経剝離術など,テーマが多岐にわたり,いずれもたいへん興味深い内容である.
Copyright © 2016, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.