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7月号の編集後記の中で冨永悌二先生が四川大地震について触れられていたが,偶然にも6月14日岩手・宮城内陸地震発生の瞬間,仙台市内に居合わせた.前日まで松島で,第23回日本脊髄外科学会が冨永会長の下に開催され,その翌日仙台で教育セミナーを開催する,まさに直前の出来事であった.会場のビルに入った直後に,立っているのも困難なほどの大きな揺れを経験した.講師,参加者ともにエレベーターに乗り込む直前であったため,2階の会場まで階段を使って移動していただきセミナーは時間通り開催されたが,その後のニュースで多数の被害が発生したことを知った.私自身,身をもって地震の怖さを体験したが,未だに被災者の方々は不自由な生活を強いられていると聞く.何よりも,一刻も早い復興をお祈りする.
さて,このところ医療の崩壊が叫ばれ,外科系を志す医師の減少が大きな問題となっている.脳神経外科も例外でなく,志望者の減少が著しい上に,せっかく脳神経外科医を志した者が研修の途中で断念し進路を変えてしまうケースも多い.このような時代に脳神経外科教育,とりわけ手術教育をいかに行うかが大きな問題となっている.外科系のトレーニングでは,すぐに術者という主役を演じられるわけでなく,はじめは地味な脇役から積み重ねが必要であり,これはいつの時代でも変わらない.そこでいかにモチベーションを維持させながら,経験を積み上げていくかが最も重要となる.以前のように,指導医や先輩を見て自分で学びなさいという放任主義では今の若い人たちはついてこない.しかし,このキーワードとなる“モチベーション”がくせもので,はたして今の若者にとっての“モチベーション”となるものは何か,少し検討してみる必要があるのではないだろうか.さもないと独りよがりな押しつけになってしまう.手術教育の機会は,実際の手術の現場,手術書,手術ビデオ,学会や研究会,教育セミナー,遺体を用いた手術手技実習等さまざまあるが,若手の指導にあたる者が全員一丸となって知恵を絞っていかなくてはいけない.特に若い感覚を持った指導者のアイデアが重要である.ところで,毎年遺体を用いた手術手技実習を企画している施設として感じることは,年を追うごとに企業からの協力が得られにくくなっていることである.特に今年は手術用顕微鏡を揃えるのに大変苦労した.日本脳神経外科学会が,学会として手術教育について多方面からサポートするシステムを構築することを切にお願いしたい.
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