- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
本号の巻頭には阿部 弘先生の「外科医は何歳まで手術できるか」という大変示唆に富んだ「扉」をいただいた.阿部先生に学会などでお会いした時に,今も手術を定期的にしている,とおっしゃっていたが,「扉」では高齢の脳神経外科医が手術を続けるために心がけるべき点を見事にまとめてくださっている.もちろん本人の健康が第一だが,医学の進歩に遅れないように勉強を続けること,患者への対応を自分自身が責任を持って行うことなど,重要な内容が記されており,これを実行されている阿部先生に敬意を表したい.高齢の脳神経外科医が手術できる場を提供する問題のみならず,メスを置いた後の脳神経外科関連診療の場の問題も学会レベルで検討していく必要があろう.脳神経外科医療について,患者の年齢に関する医学的側面はしばしば学会でも論文でも取り上げられているが,これからの時代背景を考えると医師の年齢についても広く議論が求められる.
本号には重要な総説が2編掲載されている.鈴木秀謙先生からは,「くも膜下出血後の遅発性脳障害」をいただいた.鈴木先生は,この問題をライフワークの1つとされてきたので,大変わかりやすく現状をまとめてくださった.遅発性の脳血管攣縮の問題だけでは遅発性脳障害を解決できず,早期脳損傷の研究がさらに必要であることを強調されている.来年の日本脳神経外傷学会学術集会会長の亀山元信先生からは,総説「頭部外傷データバンク」をいただいた.脳神経外科のサブスペシャリティーの中では,日本脳神経外傷学会は早くからデータバンクを整えてきたが,その背景や外国の状況,そして関連するビッグデータバンクについて解説がなされている.その他にも本号には,興味ある研究論文,テクニカルノート,症例報告などが掲載されているので,精読をお願いしたい.
Copyright © 2015, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.