Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
Ⅰ.はじめに
慢性疼痛は,急性疼痛の生体防御に果たす役割を越え1〜3カ月以上持続する痛みであり,発生機序より次の3つに分類される.①痛覚の受容器が刺激されて発生する侵害受容性疼痛(nociceptive pain),②知覚求心路神経が障害されたことで発生する神経障害性疼痛(neuropathic pain),③心因性に発生する心因性疼痛(psychogenic pain)である.慢性疼痛は,これらの病態が重複することが多く,特に神経障害性疼痛は,薬物および外科的治療が奏功せず治療に難渋する.
神経障害性疼痛は,2008年,国際疼痛学会(IASP)により「体性感覚系に対する損傷や疾患によって直接引き起こされる痛み」と定義された27).神経の損傷部位によって末梢性と中枢性に分類される.末梢性神経障害性疼痛は,帯状疱疹後神経痛,糖尿病性神経障害に伴う痛み,腕神経叢引き抜き損傷後痛,幻肢痛などが挙げられる.中枢性神経障害性疼痛は,中枢性脳卒中後疼痛(central post stroke pain:CPSP),脊髄損傷後疼痛(spinal cord injury pain:SCI痛),多発性硬化症を原因とする疼痛などが代表的である.脳神経外科医は,中枢神経系疾患の治療に携わることが多いため,必然的に中枢性神経障害性疼痛に関わることが多い.
脳卒中や脊髄損傷のように中枢神経系の障害により,運動麻痺や知覚異常などの後遺症のある患者に疼痛が加わると,quality of lifeはさらに低下する.そのため中枢性神経障害性疼痛患者においては,複合的要因を考慮した包括的診療のもと,薬物や外科治療,理学療法や心理療法を併用し集学的治療をすることが望ましい.脳神経外科医は,その中心となって積極的に疼痛治療に取り組むことが期待される.今回,脳神経外科医が知っておきたい中枢性神経障害性疼痛に対する最新の薬剤治療および外科的治療に関して報告する.
Copyright © 2015, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.