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はじめに
神経障害性疼痛とは四肢末梢,体幹あるいは頭部(脳,脊髄を含め)の障害部位,またその障害部位から中枢に至る神経伝達路において,疼痛に対する反応性に異常が生じたものであり1)(国際疼痛学会の定義による「実際に組織損傷が起こったか,または組織障害の可能性があるとき,またはそのような損傷を表す言葉によって述べられる不快な感覚,および情動体験」という「痛み」2)のうち,特に神経障害との関連が示唆される「痛み」),治癒が期待される時期より遷延し,かつ難治化した疼痛であるといえる。難治性疼痛は,この神経障害性疼痛(neuropathic pain)と,侵害受容器を介した侵害受容性疼痛(nociceptive pain)に大別できる3)。侵害受容性疼痛の主体である癌性疼痛については,オピオイドの内服薬や貼付薬,あるいは注射薬によるWHOラダーに基づく標準的方法による加療4-6)が,今日では一般的である。したがって疼痛に対する外科治療を論じる場合,主に神経障害性疼痛に対する手術が取り上げられる場合が多い。なお神経障害性疼痛は体性感覚系の求心路が損傷あるいは遮断され生じた疼痛であるので,求心路遮断性疼痛(deafferentaion pain)とも表現される。
これら難治性の神経障害性疼痛に対して行われる手術は,神経遮断や神経破壊によるものと,神経刺激によるものに大きく二分される7,8)。神経遮断や神経破壊は,脳あるいは脳へ至る神経伝達に切截や凝固などの手術操作を加えて疼痛を軽減する。神経刺激による方法は疼痛に関連する神経構造に対して,電極を留置し,通電により神経機能を調節し疼痛を軽減する。神経刺激療法を中心とした可逆性のある後者の方法が,近年では神経障害性疼痛に対する外科的治療の主流である7,8)。
刺激のための電極に関しては,従来は刺激可能な電極数が1本のリードに4個でしかなかった。しかし近年の装置では,8個や16個の刺激電極をさまざまな組み合わせや刺激パターンで刺激することが可能となっている。また神経刺激装置は,3軸センサーを用い体位によって刺激強度を自動調整するなど,その技術や機器の進歩により,さらに低い侵襲性と高い有効性が提示され,体外式に充電可能なものがわが国でも導入されており,電池消耗のたびに刺激装置を頻回に交換する必要性もなくなっている。一方の神経遮断や神経破壊術では,電極や刺激装置などの人工物を体内に植え込む必要がないため,感染や器機のトラブルの恐れがなく,また永続的な結果が期待できる利点から,決して時代遅れの治療法ではない確立した存在であることも認識すべきである。
疼痛の外科的治療は各種保存的治療では効果が不十分な場合に施行されるが,逆に,それのみで必ず疼痛治療が完遂する最終手段であるともいえない。疼痛に関連するさまざまな要素や,時間経過による症状の変化に対し,外科手術には薬物療法あるいはリハビリテーションなどが適切に組み合わされ,さらなる治療効果が希求される必要性がある。
Abstract
Different surgical procedures are available for the treatment of many neuropathic pain syndromes. These surgical procedures can be divided into 2 main sections: non-destructive and destructive procedures. In recent years, the non-destructive neurostimulation method has undergone rapid development. Neurostimulation can be applied to a large part of the nervous system including the brain, spinal cord, and peripheral nerves. Spinal cord stimulation has become a dominant pain relief modality because of its minimal invasiveness and the development of a multi-contact stimulating electrode system powered by a multi-programmable and rechargeable stimulator. Currently, destructive surgical procedures have a limited range of indications for pain control. However, the advantages of destructive procedures over non-destructive ones include continuous pain reduction without implantation of a stimulation system. Each of the surgical procedures has great potential for providing patients with significant relief from neuropathic pain.
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