扉
平成改元と大正生まれ
最上 平太郎
1
1大阪大学脳神経外科
pp.309-310
発行日 1989年4月10日
Published Date 1989/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436202796
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昭和64年1月7日昭和天皇御崩御とともに激動の昭和時代が終りを告げ,翌8日平成と改元され,新しい時代の幕明けを迎えた.私など大正も末に生れたものにとっては遠のき過ぎ去っていく大正・昭和に何ともいえない郷愁を感ずる.これまで明治生れというとずい分年配のお年寄りを連想したものであるが,今度はこっちがそう見られる破目になってしまった.昭和改元の日「降る雪や明治は遠くなりにけり」と詠まれた先人の句がこのときほどしみじみ感じられたことはない.
自分自身ではまだ若いつもりで,大学を卒業したのもついこの間のことと思ってはいたが,周囲がそうは思ってくれる筈もない.新人類といわれる若い人達にいわせると,この年齢ともなると前世紀の遺物か化石人間なのだそうだ.そういっている連中もいずれ同じ運命を辿ることになるのにいい気なものである.曰く,近頃話がどうも冗長になってくどい.同じことを繰返す.話の途中から脱線して,中々本論に入らない.とみに忘れっぽくなった等々.息子達の話だと近頃の世の中のことがよく判っていない.話が古すぎてとんちんかんなことをいう.いらぬお節介をやきすぎてうるさい.すぐに説教につながるので話ができない,ついていけそうもない由.まあよくもいろいろと"御託"を並べられたものである.
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