教材
日本近代女性史—第7回 大正デモクラシーの波にのって
福地 重孝
1
1和洋女子大学
pp.41-44
発行日 1962年1月1日
Published Date 1962/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663904132
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
第一次大戦と女性
第一次世界大戦は,1914年(大正3)の夏から1918年(大正7)の秋まで,4年3ヵ月ばかり続いた。日本は,日英同盟によってドイツに参戦したが,戦局は,ヨーロッパに局限されていたため,戦争によって精力を費やすことはなく,かえって戦争のために経済界は活況をつづけ,貿易は入超がつづいた。10年までには国際受取勘定が23.4億に達し,ゴールド・ラッシュは成金趣味をさかんにし,景気の活況はいきおいインフレ的傾向をまねき,物価の騰貴が目立っていった。
ところで戦場となったドイツでは,婦人は看護婦として出動したばかりでなく,男子に代って女子が農業を引受け,女学生も空地を耕して食糧の確保にあたった。そのほか会社・銀行・商店はもちろん,郵便事務から配達まで,またこれまで男子の従事していた鉄道・電車・自動車など複雑な仕事をとって代り,さらに婦人が武器の製造に従事していたのであった。またロシアでは,婦人が兵士として戦闘に参加した例もあるし,物理・化学・医学などに関する技術的な職場も高等教育をうけた女性によって果たされた。これまでイギリス・フランス・ドイツなどでは,戦前から婦人の数が男子より多く,結婚難の社会現象があったが,戦争のため多数の男子が戦死したり,不具者になって婦人の結婚難はますますひどくなった。
Copyright © 1962, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.