扉
核と錯覚,NMRとMRI
松岡 健三
1
1愛媛大学脳神経外科
pp.705
発行日 1985年7月10日
Published Date 1985/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436202036
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"核"—と言っても細胞核ではなく原子核の方であるが,そのイメージとして,われわれ日本人にとっては,広島,長崎の原爆は真っ先に想い出されることであり,またこれは永久に忘却してはならないことでもある.日本人のいわゆる核アレルギーはつとに有名であるが,中距離ミサイルの配備について,ヨーロッパ各地で反対運動が熾烈らしい.また,最近ニュージーランドが核搭載の米国艦船の寄港を拒否したように,世界的に反核意識は高まりつつある.
昨年11月,米国の病院数ヵ所を訪問する機会に恵まれた.NMRやPETの機種と普及度を調査するのが旅行の主目的の1つであった.Mayo Clinicを訪れた折り,ここの数少ない日本人教授の1人であるNeurologyの柳原武彦教授から「今米国ではNMR-CTと言わずにMRI(Magnetic Resonance Imaging)と呼ぶことになっている」と教えていただいた.理由は,NMRのNuclearという語が被験者に無用の恐怖心を起こさせるからとのことであった.当然のことながら,米国でも核のイメージはよくないのである.
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